「元彼が忘れられない。」というのは友人のM。元彼とはキャバクラで知り合ったらしい。Mが働いていたキャバクラにお客さんとして来店したのがきっかけだそうだ。この元彼というのは決して誰もがうらやむいい男というわけではない。身長も低く、ビールっ腹が見事にせり出していて、生え際も後退し始めたアラサー男子である。
 付き合って3ヶ月で男の浮気が発覚し、一度別れている。しかし、別れた後も深夜に家に呼び出されたり、食事に誘われたり、体の関係も持ったりしていた。それでも男の方には「付き合っている」という認識はないらしく、Mから送るメールは無視、電話も出ない。最近は男の行動に拍車がかかり、暴力をふるわれたり、家に呼び出されたと思ったら力ずくで押し倒され、無言の性行為が始まるらしい。そんな状況でも、Mは「音信不通になるよりは今の方が幸せ」といい、都合のいいように呼び出されている。
実はMはそんな状況を楽しんでいるんじゃないか、と最近思い始めている。「辛い」と言いながらも連絡をとることはやめず、わたしと会うたびにどんなひどい仕打ちを受けているかを嬉々として話すのだ。きっと彼女は元彼が好きなのではなく、「ひどい仕打ちを受けているかわいそうなわたし」という状況に酔っているのだ。最初は真剣に彼女の相談に乗っていたが、彼女が今の状況を望んでいる以上、どうしようもない。彼女がまともな恋愛をするのはいつになるか心配である。